運よく、お昼休みの時間中に真央ちゃんのフィギャスケートのターンとなった。
同僚のケータイTVだけが頼りだったのだけど、うちの会社、電波の状態が悪いらしくて、静止画のまま…。声すら入ってくれない。
うきゃぁあああ！
　仕方なく、アンテナがついていない会社テレビにすべてを託してスイッチオン。
白黒砂漠の中で誰だかわからぬ黒い人影のようなものが動いて見える映像を無理矢理に「まおちゃん♪」と、認識して見た。「ＮＨＫスペシャル映像の世紀」でもこんな画質の悪い映像無かったぞ…。

　でも、黒い人影（実は真央ちゃん）がピョン♪クルクルッ♪と綺麗にジャンプするのは分かった。
ちょっと、ヨロけてしまったのもわかってしまった…。
毎日、血がにじむような努力をして練習を繰り返しても、頑張っても、頑張っても、それでも四年に一度しかない一番大事な場面で転んだりヨロけたりしてしまう、フィギャスケートは華麗であって、そのぶん、なんて残酷な世界なんだ。
私は何もないところで何もしなくても転ぶけど。たまに、転ぶまい、と意識しても山城でずっこけて転がってしまうけど。
　真央ちゃん、結果はご存じの銀メダル。それでも世界で２番目なのに、悔し泣きする真央ちゃんが可愛いい。同僚たちと、もらい泣きしちゃったじゃないか。
　いつも天真爛漫な真央ちゃんだけど、誰よりも気高い精神を持ってるのね。悔しいね、悔しいね。私の買ったトルティアが食べにくいという私の悔しさとは比ではないね。
崇高すぎるその涙。
真央ちゃん、きっと、この日をバネにして、将来はもっとすごい選手になれるに違いない。
机の上に野菜をボロボロと落としながらトルティアを食べた私には分かる。

　そんな私は今日も残業であった。
他のメンバーも遅くまで残業していたので、お菓子をいくつも開けて食べあって「おいしー！ビール欲しー！」「あ、ビールあるよ。」と叫びつつ仕事する（ビールは飲んでません）。
帰る頃にはお菓子でお腹がふくれて胃が気持ち悪くなってしまっていた。
おお、真央ちゃんと私の生きる世界はランクが違いすぎｗｗｗ
２月ももうすぐ終わる。　

　真央ちゃんを見て今一度、島津忠良の言葉を思い出す。

「道にただ身をハ捨てむと思ひとれ
かならす天のたすけあるへし」

自分がこれぞと信じる道をただひたすら、命を捨てる覚悟で進め。